
BMW Motorradの新しいF450GS。
「軽量で扱いやすいGS」
「420cc並列2気筒を搭載したGS」
「ERC(Easy Ride Clutch)を搭載したGS」
いろいろな説明ができるバイクです。
でも、モトラッドアルファ新潟で試乗車を用意し、私自身も300km以上走ってみて感じたのは、
F450GSは、スペックだけではちょっと説明しにくいバイクだな。
ということでした。
普通ならここで、
「軽くて扱いやすく、街乗りからツーリングまで幅広く楽しめます!」
みたいなことを書けば、たぶん商品紹介としては正解です。
でも、それでは面白くない(笑)。
実際に乗ってみると、もう少し妙なところがあるバイクなんです。
そして、お客様に試乗していただくようになってから、さらに気になることが出てきました。
それは、
試乗から帰ってきた時の顔。
なんです。
「……なるほどねぇ」という顔で帰ってくる

もちろん皆さん楽しそうなんですが、
「うわ、すごい!」
という感じとも、ちょっと違う。
なんというか、
「……なるほどねぇ」
という顔で戻ってくる方が多いんです。
嬉しそうなんだけど、ちょっと考えている。
バイクを降りて、ヘルメットを脱いで、
脳内反省会が始まっている感じ(笑)。
最初は気のせいかなと思っていたのですが、何人か続くと、こちらも気になってきます。
しかも面白いことに、これまでいろいろなバイクに乗ってきた方ほど、この傾向が強いように感じます。
以前G310GSに乗られていたお客様からは、
「G310GSで『もう少しここがこうだったら』と思っていたところが、全部よくなってる」
という感想もいただきました。
これ、F450GSというバイクをかなり上手く表している気がします。
G310GSの願い事を全部聞いた?

F450GSは420ccの並列2気筒エンジンを搭載し、最高出力48PS、最大トルク43Nm。
車両重量は178kg。
数字だけ見てもG310GSから大きく進化しています。
でも実際に乗ってみると、単純に
「G310GSを速くしたバイク」
という感じではありません。
エンジンだけでなく、フレーム、ブレーキ、サスペンション、電子制御。
バイク全体が一段上のところで作り直されています。
そこで勝手に想像してみます。
G310GS
「もう少しパワーが欲しいです」
BMW
「はい」
G310GS
「足まわりも、もう少し……」
BMW
「はい」
G310GS
「ブレーキも……」
BMW
「はい」
G310GS
「高速道路も、もうちょっと楽だと……」
BMW
「全部やりましょう。」
そしてF450GSができた。
……そんな開発だったかどうかは、もちろん知りません(笑)。
ただ、以前G310GSに乗っていた方の「欲しかったところが全部よくなってる」という言葉を聞くと、
案外、遠くないのかも?
と思ってしまいます。
このエンジン、あまり急かしてこない

F450GSで最初に印象に残ったのは、意外にもパワーではありませんでした。
このエンジン、あまりライダーを急かしてこないんです。
特に60~70km/hくらい。
このあたりを流していると、妙に気持ちがいい。
「もっと回せ!」
とも言ってこない。
「もっとアクセル開けようぜ!」
とも言ってこない。
エンジンが割と大人です。
細かなパルス感を感じながら走っていると、気がつけばそのくらいの速度に落ち着いています。
もちろんアクセルを開ければ、420cc・48PSなりにちゃんと加速します。
ただ、R1300GSやF900GSのように、
「あれ、もうこんな速度?」
という加速ではありません。
F450GSでは速度計を見て、
「うん、だいたい想像通り。」
となります(笑)。
でも、それが不思議とつまらなくない。
「速く走れないからゆっくり走る」のではなく、
「速く走らなくても楽しい」。
この違いは、結構大きいと思います。
軽いのに、落ち着いている

178kgという車重を見て、乗る前はもっとヒラヒラしたバイクを想像していました。
ところが実際には、
「クイック」より「素直」。
ワインディングでは、自分が選んだラインに自然に乗ってくれる。
少しペースを上げても車体がバタつかず、フレームもしっかりしています。
つまり、
軽快なのに、妙に落ち着いている。
ここでもまた、
「……なるほどねぇ」
が出てきます。
初心者なら、
「あ、乗りやすい」
で終わるところを、いろいろなバイクに乗ってきた人ほど、
「待てよ。なんで乗りやすいんだ?」
となる。
そして考え始める。
このバイク、妙にこちらへ宿題を出してきます。
100km/hは、ちゃんと100km/hです

もちろん、何でもできる魔法のGSではありません。
高速道路では、F900GSやR1300GSのような余裕はありません。
大きなGSには、100km/hという速度を薄めてしまうようなところがあります。
F450GSは違います。
6速100km/hでは約5,500rpm。
エンジン、ハンドル、ステップ、車体から、
「ただいま100km/hでございます」
と、ちゃんと報告が来ます。
つまり、
F450GSにとって、100km/hはちゃんと100km/h。
ここは排気量なりです。
でも60~70km/hに戻すと、また妙に気持ちいい。
なるほど。
得意なところが、かなり分かりやすい。

サスペンションについても同じです。
今回の車両はSportサスペンション装着車ですが、F900GSなど上位モデルの上質な足まわりと比べれば、大きな入力をきれいに「いなす」感覚や、その後の収まり方には違いがあります。
一方でフレームとブレーキはかなりしっかりしている。
特にブレーキは十分以上に強力です。
乗っていると時々、
「そこはそんなに本気なんだ?」
と思うところがあります(笑)。
このアンバランスではなく、メリハリもF450GSの面白いところです。
そしてERC。君は何者なんだ。

F450GSを語るなら、ERC(Easy Ride Clutch)は避けて通れません。
クラッチ操作を自動化して、発進や停止時にクラッチレバーを操作しなくても走れるシステムです。
文字で説明すると、
「ああ、初心者向けの便利装備ね」
で終わりそうです。
ところが実際に乗ると、終わりません。
むしろ始まります(笑)。
アイドリングは約1,600rpm。
そこからそーっとアクセルを開けると、エンジン回転だけが上がっていく。
そして約2,700rpm付近でクラッチがつながり始める。
最初は、
「……まだ? まだなの?」
となりました。
ところが発進時に少し明確にアクセルを入れると、2,700rpm付近までスッと回って、そのまま自然に発進する。
「あれ? こっち?」
となります。
さらに低速ではリアブレーキを使って速度を調整してみたり、いろいろ試したくなる。
そうなると、もはや
「クラッチ操作がいらない便利装備」
だけでは説明できません。
今のところ感じているのは、
ERCはライダーの技術を不要にする装置ではなく、必要になる技術の種類を変える装置なのかもしれない。
ということ。
なぜ約2,700rpmなのか。
低速ではどう使うのがいいのか。
オフロードではどうなのか。
……はい。
考え始めてしまいました。
この話は長くなるので、ERCだけでまた別の記事にします。
330km走ってみた。あれ、意外と疲れてない。
一日に約330km走ってみました。
しかも30℃を超える暑い日。
Rallyシートも見るからに、
「長距離? 任せてください!」
という形ではありません。
むしろ、
「立って乗るんですよね?」
という顔をしています。
なので結構疲れると思っていました。
ところが帰ってみると、意外なくらい疲労が少ない。
普段乗っているF900GSと比べても、想像していたほど大きな差がありませんでした。
もちろん500km、600kmと距離が伸びたり、高速道路中心になれば話は変わるでしょう。
Rallyシートが長距離向きだ、と言うつもりもありません。
でも、車体の軽さ、自然なポジション、穏やかなエンジン、操作に必要な力の少なさ。
全部を合わせると、
「バイクから要求される仕事が少ない」
んです。
だから一日乗っても、こちら側に少し余力が残る。
これはF450GSの「気軽さ」を考えるうえで、結構重要なところかもしれません。
結局、初心者向けなの?
軽い。
扱いやすい。
パワーも穏やか。
ERCもある。
ここだけ見れば、
「初心者向けGS」
という説明は簡単です。
でも実際に試乗していただいていると、どうもそれだけではない。
初めて乗る方なら、
「あ、これ乗りやすい」
となる。
いろいろなバイクに乗ってきた方なら、
「……なんでこんなに乗りやすいんだ?」
となる。
初心者は、その乗りやすさそのものを受け取れる。
経験のあるライダーは、その乗りやすさがどう作られているのかを考え始める。
だから今のところ、
「初心者向けのGS」ではなく、
「初心者まで守備範囲に入れたGS」
という表現が、一番しっくりきています。
「能力の余裕」ではなく「気軽さの余裕」
R1300GSには、かなり大きな能力の余裕があります。
長距離、高速道路、ワインディング、未舗装路。
何かを要求すると、
「はい、それもできます」
と返してくる。
F900GSなら、もう少しスポーツやオフロード側へ軸足を置きながら守備範囲を広げています。
ではF450GSは?
300km以上乗った今は、
GSというバイクが持つ守備範囲の広さを、大きな能力の余裕ではなく「気軽さの余裕」で作ったGS。
なんじゃないかと思っています。
舗装路を走る。
高速道路も使う。
知らない道にも入ってみる。
その先が未舗装でも、あまり構えなくていい。
そして普通に走っているだけでも楽しい。
「よし、GSに乗るぞ」ではなく、
「ちょっとGSで行ってくる」
くらいの距離感。
それもちゃんとGSなんだと思います。
で、結局どんなGSなの?
ここまで書いておいて何ですが、
まだ全部は分かりません(笑)。
むしろ300km以上乗った結果、乗る前より考えることが増えました。
ERCも、サスペンションも、オフロードも、長距離も、まだ試したいことがあります。
でも、ひとつだけかなり確信していることがあります。
F450GSは、スペック表だけ見て判断するには、ちょっともったいないバイクです。
なので。
ここまで長々と読んでいただいたのに申し訳ありませんが、
一度乗ってみた方が早いです(笑)。
モトラッドアルファ新潟にはF450GSの試乗車があります。
「450ccのGSってどうなの?」
「ERCって本当に便利なの?」
「大きなGSと何が違う?」
そのくらいの興味で大丈夫です。
ぜひ一度、自分で確かめてみてください。
そして帰ってきた時に、
「……なるほどねぇ」
という顔になっていたら。
ぜひ、その理由を聞かせてください。
たぶんそこから、
また話が長くなります(笑)。
次回:ERCって、本当に初心者向けの装備?(評判が良かったら考えます)







